神社
近所に神社があった。
子供の足でも4−5分の場所だ。
隣接してブランコ、シーソー等がおいてある、小さな公園がある。
私が物心ついたころからそこにあったが、神社の境内を囲む松林が昔より小さく感じる。
私の体が大きくなったからだろうが、木々の枝ぶりや葉の色も少し元気を失って見える。
林の地面にもすみれ等小さな野草や野花が咲き、適度な湿気を保って、小さな生き物たちの生活の気配がした。
今は白っぽく乾いて、踏み固められて静かな感じだ。

境内の地面は昔から乾いた感じで硬く、生き物は蟻ぐらいしか穴を掘れそうになかったが、数種の蜂が巣を営んだ。
ミツメトガリアナバチもそのひとつだ。
この蜂は黒い体に細かい銀色の体毛がある1センチあまりの細い蜂だ。
土中に穴を掘り巣を作るが、それこそ子供たちが走りまわっている地面に、かまわず穴を掘った。
巣穴の入り口も一旦出来上がると周りの土くれも少なく、目立たない。
子供の餌を抱え、地面を走って穴に消える。
餌はヒシバッタの仲間。
営巣環境とヒシバッタの生息環境が一致するため、狩りを成功させると蟻の様に走って帰ってくる。
この蜂はその他のトガリアナバチと同じく、巣穴は開けっ放しである。
多くのジガバチ、アナバチが入り口を出かける度に塞ぐのとは異なっている。

境内の縁の下にはチャスジコハナバチが巣を作った。
土は乾ききっており、時々子供がもぐりこんで、かくれんぼなどして遊んでいた。
このコハナバチは好んで日陰の地面に穴を掘り、花粉と蜜で作った団子を作って産卵する。
初夏から夏の季節だったように記憶している。

柱には虫があけた穴があったが、そこにも蜂が巣を作った。
木の穴や、竹筒に巣を作る蜂は沢山紹介してきたが、神社には定番というような蜂が存在した。
 ネジロハキリバチ。
黒い体で、胸部と腹部の間(厳密に言うと、前伸服節と腹部)の間の部分に白い短い毛を持つ。
カミキリムシか、キクイムシかわからないが、神社の柱に直径1センチ余りの穴が開いていた。
そこにこの蜂がよく巣を作った。
ハキリバチとは名ばかりで、この蜂の巣の材料はやにである。
そう、針葉樹などの樹脂で巣の育房を仕切るのである。
子供の餌はやはり他のハキリバチの様に、花粉と蜜の混合物である。
境内の木にもやにを採取に来ていた。
 この蜂は実家の周りにも巣作りに訪れていた。
中学になってだったと思うが、実家の母屋の前にプレハブの部屋が作られ、兄と私が寝起きするようになった。
その部屋の道に面した窓に蜂の巣トラップを据え付けた。
縦50センチほどの板に3〜4センチほどの板を木工用ボンドで貼り付け、さらにガラス板を貼り付けた。
ベニヤ板をスライド式に開閉出来る様にし、それを両面使いに設置した。
窓に取り付ける安いクーラーがあるが、丁度あんな感じだ。
生態写真で紹介しているので、見ていただければお分かりだと思う。(コクロアナバチ等の写真はこのトラップで観察したものだ)
このトラップにオオハキリバチや前述のネジロハキリバチもやって来て巣を作った。
側面のベニヤ扉をスライドさせ、観察出来たが、この蜂たちは、穴の中の状態が隙間があったりして気に入らないと、
中をヤニだらけにしてくれるので、すこぶる観察がし難かった。
 ただこの蜂に限らず、このトラップ設置によって初めて巣内の行動を観察できたのは大きな感動であり興奮だったと記憶している。
トラップに呼び込むのは、ほとんど蜂まかせだった。
だが時々明らかに巣作り場所を探している蜂がいて強引に呼び込むこともあった。
場所探しをしている蜂は、軒下や木の穴などにまとわりつくように飛び続ける様子ですぐわかった。
これを虫取り網で捕らえ、蜜を与え、一旦暗所に移すなどして少し落ち着かせてから、そっとトラップの入り口から送りこむのだ。
成功率は結構高かった。
実は、ネジロもコクロアナバチもそうやって呼び込んだのだ。

神社の造りや正式な名称は知らないので稚拙な文になるのはお許し願いたい。
本殿の周りにある祠もかなり古びていた。
壁面は木の板だったが、その隙間に多数のオオカバフスジドロバチが営巣していた。
古くなっているので、板の裏側と壁土に隙間が出来ていた。
この蜂は他のドロバチの様に蛾の幼虫を餌として子供を育てるが、巣の形に特徴がある。
ヘチマのような土で出来た巣には2〜3の育房が造られ、入り口には像の鼻のような筒が取り付けられる。
この筒は育房に餌を運び込む間だけ存在し、巣の完成後は取り払われ巣の入り口はふさがれる。
他の多くのドロバチは竹筒などの既存の穴に巣を作り、幼虫の餌を貯蔵した部屋は、土の隔壁で仕切られるという、
単純な構造である。
巣作りのペースも、餌の貯蔵のスピードに依存し、必要な量の餌を蓄えると、早々とその巣を完成させる。
しかし、このオオカバフスジドロバチは育房に産卵した後、非常にゆっくりと餌を蓄え、幼虫が成長している部屋に餌を運び込む状態が
普通に見られる。
また、巣作りに適した環境に非常に多くの固体が営巣するのを何度も見た。
大体閉鎖空間に巣を作り、他のドロバチの様に、穴の状態ではなくても石碑の隙間や割と広い木の穴や、前述の様な壁の隙間によく
巣を作る。
私はアメリカジガバチの巣の羽化後の穴に付いたこの蜂の例の像の鼻を見たことがある。
又、竹筒に巣を作った、逆に珍しい例も見たことがあるが、この場合は筒の内壁にわざわざ土を塗って部屋を作っていた。
次世代が戻って再び同じ場所に営巣する事が多いようである。